事実上の政府保証に一定の歯止め?
事実上の政府保証とは?
昨日日経ネットで見つけたニュースに、
大企業向け政府保証、管理を強化
300億円以上に報告義務
があります。
内容は、
政府系金融機関が企業向け融資に事実上の政府保証をつける場合、300億円以上のケースでは事前に報告を義務付ける
こと。
この事実上の政府保証とは、
①内外の金融秩序の混乱又は大規模災害に対応するため、主務大臣による認定がなされた危機対応業務の融資の内で
②日本政策投資銀行(DBJ)、商工中金が貸付等を行う際にそれぞれ貸し倒れリスクが高いと判断すると、
③同じ政府系の日本政策金融公庫に保証料を支払い
④貸し倒れ時にDBJや商工中金が日本政策金融公庫から返済を受ける補償契約(損害担保契約)を結ぶ
こと。

DBJの前身は日本開発銀行で大企業向け
株主は100%財務大臣
DBJは半沢直樹に登場した開投銀のモデルだよ

日本政策金融公庫の前身は国民金融公庫で中小企業や個人向け
通称は国金(こっきん)だったよ
日本政策金融公庫の株主も財務大臣・経産大臣・農林水産大臣・厚労大臣のみ
もし貸し倒れが発生すると融資を行ったDBJ・商工中金は日本政策金融公庫から返済を受けます。
日本政策金融公庫は前もってDBJや商工中金から一定の保証料を受け取ってはいますが到底足りず。
不足金は日本政策金融公庫の100%株主である国による補助金注入で賄われます。
要は国が税金を使って貸し倒れのツケを払うということ。

日本政策金融公庫は自分の懐が痛まないから安易に補償契約を締結可能…
貸し倒れが発生すれば税金が投入されるため、それは国民負担が発生することとイコール。
しかしそれが国会のチェックも効かずにDBJと日本政策金融公庫のさじ加減のみで決まる仕組み。
補償金額の上限も無く、政治家や役所などの介入も外には全く漏れてこないブラックボックス…

口利きの温床だよ…
事実上の政府保証は国会の決議が不要
これまでは「1か月分をまとめて補償契約や融資を財務省に報告」していたものを、日経ネットの記事によると「300億円以上の案件は融資が決定したら実行までに財務省へ報告」するよう変更されました。
尤もそれでも問題点が少なくとも二つ。
①保証付き融資を決定した事後報告では意味がない
②300億円で区切る意味がない
です。
まずは①。
保証の有無にかかわらず一旦融資を決定すればそれは契約。
財務省に報告した後で横やりが入り「やっぱりだめでした」とは言えるはずがない。
許可しない当事者が国でも同じこと。
銀行業の基本中の基本でしょう。
そして②。
金額の大小に関係なく、税金を投入し国民負担が発生し兼ねない案件をDBJと日本政策金融公庫のみで決める仕組みに変わりはないこと。

税金の使い道を勝手にDBJなどが決めるのと同じだよ
同じ政府保証としては預金保険機構やDBJ、国際協力銀行(JBIC)などの政府機関・重要特殊法人が発行する債券に正式な政府保証を付与する政府保証債があります。
これらは国の予算案に組み込まれているので、個別の保証額などには当然ながら国会の決議を必要とします。
しかし本件「事実上の政府保証」には国会の決議は不要、且つDBJと日本政策金融公庫の間だけで決まってしまう…
日産向け融資に事実上の政府保証
この事実上の政府が世に広く知られたきっかけは、日本政策投資銀行(DBJ)による今年5月に実施された日産向け1,800億円の融資。
その内の1,300億円に事実上の政府保証を付けていました。
ニュースや新聞で何度が取り上げられていたので知っている人も多いと思います。

一企業に1,300億円もの政府保証?
日産は大企業であり、且つすそ野の広い自動車産業なのでもし倒産すれば影響は甚大。
しかし事実上の政府保証であり、且つ巨額の国民負担に成り兼ねないのに、国会の決議も経ずDBJと日本生活金融公庫だけで決められた…
しかも政府(国民)から信用供与を受けているのにリストラ策などは全くの不十分…
危機対応業務自体は非常時に低利融資を可能とする仕組みであり、今後も必要な枠組みでしょう。
しかし国会決議不要で実施可能な事実上の政府保証の仕組みは不正の温床と成り兼ねず、政治家・役所などの不当な介入・口利きも入りやすい…

まさに半沢直樹の開投銀の世界…
実はこの危機対応融資の実績は財務省のHPに公表されています。
しかし件数と金額のみ。
どうせなら融資先の実名も公表すればいい。
透明性が高まれば不正や恣意的な運用は発生しにくいので。
国民による信用供与を受けるのですから、事実上の政府保証を受ける企業は役員・従業員に対する徹底的なリストラも必要でしょう。

デフォルトしたら国民負担が発生するのはもちろん、保証を受けるだけで国による信用力の恩恵を享受するからね
民間から普通に資金を調達できるなら政府系金融機関など本来は不要。
しかも資本市場にアクセス可能で大手銀とも取引している大企業相手の政府系金融機関などは尚更。
であればDBJやJBICは民間金融機関以上に情報開示を行い、融資決定や保証契約締結・貿易金融などの与信行為のプロセスもオープンにするべきでしょう。
オープンにできないような取引をせざるを得ない企業ならそもそも淘汰される運命です。

日経500指数や日経225指数が上値を追う一方、TOPIXが冴えない理由もここにあるよ