会社経営者はいつまで経っても連帯保証人?
債務や保証の二重取り禁止へ
10/16の日経新聞朝刊金融経済面に気になる記事が掲載されました。
それが、
事業承継時の個人保証
先代・後継「二重取り」禁止
です。

どういうこと?
難しいな…
重要そうだけど…
融資などの与信を受ける場合、金融機関は連帯保証人を要求することが常。
以前は会社代表者以外に複数の親族などを連帯保証人とすることも普通でした。
しかし民法改正もあり現在では特段の事由が無ければ代表者のみにするようになってきています。
重畳的債務引き受けと免責的債務引き受け
この連帯保証に関して問題になるのが事業承継時。
先代社長から息子などの後継者に代替わりする際に新社長を連帯保証人にするのは当然として、先代社長の連帯保証を抜かずにそのままにするケースが多く存在しています。

なぜ?
先代社長は引退したよね?
金融機関からすれば、
①新社長の経営手腕が未だ未知数
②新社長には未だ十分な資力がないケースも多い
ことなどから、債権保全を盤石にする必要性があるから。

わからなくもないね
いざ自分が貸すとなれば、よく知らない2代目だけの連帯保証だと不安だし…
金融機関関係者以外の方には馴染みが薄いかもしれませんが、
①先代社長が企業などへの(連帯)保証契約を維持したまま
②新社長が追加で(連帯)保証人になる
ことを重畳的債務引き受け(ちょうじょうてきさいむひきうけ)といいます。
一方、
①先代社長が(連帯)保証契約を免除され
②新社長のみが入れ替わりで(連帯)保証人になる
ことを免責的債務引き受け(めんせきてきさいむひきうけ)といいます。
債務保証だけでなく、個人としての借り入れを新社長が肩代わりする際も適用されます。

いきなり超難しい用語がでてきた…
重要なのは、借主側の意向だけで免責的債務引き受けにはならないこと。
免責的債務引き受けはあくまでも金融機関側の承諾があって初めて成立。
金融機関側は債権保全の程度が弱くなる免責的債務引き受けを積極的に適用しようとはしません。

そりゃ自分から条件を緩めるはずないよね
尤も先代社長からすれば自分は経営の一線からやっと引退したのに、いつまでも(場合によっては息子等のせいで)借金が降りかかる恐怖に怯え続けることになる。
新社長からすれば、いつまでも先代社長に頭が上がらない状態が続き思い切った事業展開がやりにくい。
などの弊害があります。

先代の顔色を気にし続けるのは辛いよ
前記日経新聞の記事によれば、銀行界の親玉組織の全銀協と日本商工会議所がこの連帯保証の二重取りを原則禁止にする指針を策定するようです。
実現すれば、先代社長と新社長がそれぞれ呪縛から解き放たれることになりますね。
但し金融機関側からすれば債権保全の程度が悪化するのは確実。
免責的債務引き受けを原則応諾する代わりに、債権者の立場から債務を圧縮させたり新社長就任への拒否権を持たせるなどの可能性もあるでしょう。

何らかの制御策がないと貸し渋りに繋がる可能性もあるよ
差し入れ済みの担保と保証は別問題
注意が必要なのは、不動産などの担保を差し入れているケース。

どういうこと?
不動産担保などを差し入れたことで融資を受けられている場合、その担保が解除されると担保不足となってしまいます。
そのため先代社長保有の不動産などを担保差し入れしている場合、免責的債務引き受けを受けられても担保解除は受けられず、返済が滞れば競売にかけられる可能性は残るでしょう。
この場合、差し入れている担保の範囲内で損害を被ることになります。
負の相続財産では相続人のみの合意では免責されない
これまでは会社経営者のケースの話でした。
該当する人はそう多くないでしょう。
しかし多くの人が関わるのが相続。
負の相続財産と呼ばれる被相続人による借金や債務保証があるケースです。

相続人に内緒にしているケースは特にヤバいよね
例え相続人の間でAさんのみが借金を相続し、BさんとCさんは免れると合意し遺産分割協議書を作成しても債権者には通用せず。
法定相続割合で請求される可能性が残ります。
ここでも重畳的債務引き受けです。
法的に債務が免除されるには、「BさんとCさんは債務から免除されAさんのみが債務を相続する」という免責的債務引き受けを債権者全員に承諾してもらう必要があります。
注意しましょう!

相続人による内輪だけの合意は債権者に通用しないよ!
なお私は弁護士などの法律の専門家ではありません。
詳細に関しては法律の専門家に相談することをおススメします。