有吉ゼミ家を買うで登場した物件一覧はこちら

将来の年金財政見通しは目先10年の経済成長を高く見過ぎていないか?

oldage

5年に一度の年金財政検証の趣旨はもっと働け

8/27に厚生労働省が年金財政の現況及び見通しを公表しました。
ニュースや新聞で見た人も多いと思います。

この報告は経済状況の変化などを考慮し5年毎に見直すことで、年金制度の将来に備えるために実施するもの。
本来は先月までには公表されるはずだったものの、参議院選挙を控え公表を先送りしたとの指摘も…

小賢しいよ…

検証結果をそのまま掲載すれば27年後の2046年度頃に、
所得代替率は現在の61.7%が経済情勢等により36~51.9%へ大幅な悪化
60歳まで働き65歳から年金を受給する現在の高齢者と同レベルの年金を受給するには、現在30歳の会社員は68歳4か月まで働き続ける必要がある
など、確実に需給環境は悪化します。

はあ__

所得代替率とは、現役世代の所得の何%をその時の受給者が年金で受け取るのかという数字。

今回の検証結果が示すことは
引き下げ前の現状水準年金が欲しければ老体に鞭を打ってもっと働け!
自助努力で十分な老後資金を用意しろ!
ということ。

わかってはいることだけど凹むよね…

ここまで将来見通しが悪化する要因は大きくあげて二つ。
現在年金を受給している高齢者の需給年金水準が、そもそも自己負担額に対して過大
物価の下落に対し発動すべきだったマクロ経済スライド(年金減額)をたったの2回しか実施してこなかった
ため。

に関しては田中角栄時代から大盤振る舞い
に関しては2000年代以降、政権が弱体化する中で年金受給者に過度に忖度
いずれにしても、選挙のために政権与党が将来世代にツケを回した結果です。

ふざけるなー!

尤も前回財政検証時と比較しそう大きな違いはありません。
出生率などの足元の数字は悪化しているものの、想定以上に女性や高齢者の労働参加率が上昇しているための様です。
しかしそれは生活のためにやむを得ず働いているのであり、見方を変えれば将来の労働参加率上昇を先食いし、余裕が無くなってきているともいえます…

前提となる目先10年間の想定成長率が高過ぎないか?

今回の検証は2029年度以降の成長シナリオを5ケース設置

厚生労働省のHPで詳しい資料を見てみます。
なるほど前提となる統計の見通しは内閣府「中長期の経済性に関する試算(2019年1月、7月)」「労働力需給の推計(2019年3月)」を採用しています。

厚生労働省が鉛筆舐め舐めで有利なシナリオを作ったわけではないみたい

内閣府が作成した経済成長が進むケース(2シナリオ)、経済成長が緩めのケース(3シナリオ)の併せて5つのシナリオでシミュレーションを作成。
その結果が前記の所得代替率で36~51.9%となります。

目先10年の想定成長率見通しが高過ぎて絵に描いた餅では?

しかしPDFの資料2-1を見ていて気が付いたことが。

そもそも目先10年間の内閣府による成長見通しが甘くない?

資料を見ていて物価や賃金上昇率・年金積立金の運用成績の推計等はありますが、なぜか前提となるGDPの推計はありません。
そこで内閣府が2019年7月に作成した前記「中長期の経済性に関する試算」を見てみます。

するとその数字がまあ勇ましいこと…
成長実現ケースはまだしも、経済成長が緩めのベースラインとしても数字が甘すぎる…
その数字を拾って作成したのが下記グラフ。
青が実績値でオレンジ・グレーが内閣府が想定しているシナリオ。

GDP

高成長シナリオではオリンピックが終わっても成長が加速し高水準を維持。
ベースラインシナリオでも、オリンピック後に小幅な中だるみがあるものの再加速。
その後やや落ち着いてくる…

今後はオリンピックが終了して需要が一気に減少することに加え、消費増税の影響が本格化。
更に長期間続いている世界的な経済成長も終盤に入っていることに加え、米中間で貿易を筆頭にバチバチした状態下にあるのに…

本来は内閣府が低成長(景気後退)シナリオも想定すべきだよ

内閣府が低成長(景気後退)シナリオを作成していない以上、厚生労働省もシナリオに加えにくいのでしょう。
しかし100年安心年金などというのであれば、いいシナリオ・普通のシナリオに加えて悪いシナリオも想定しなければ説得性がないのでは?

世の中に年金不信が溢れているのは、
「本当はもっと財政状況・給付見通しが悪いのではないか?」
「政府・厚生労働省が黙っている(隠ぺいしている)悪い事実があるのではないか?」
と疑心暗鬼になっているから。

疑念を晴らすには全てをオープンにするしかないよ!

自ら進んで悪い材料・シナリオを提示した方がいいと思いますけど。
尤も例え最悪シナリオで想定しても、政府が行う全てのことに反対する複数の例の政党のひとたちは騒ぐのでしょうけど…