トヨタが本件AA種類株を2021年4月付で全株買い入れ消却すると発表。
本投稿タイトルに掲げた懸念が現実のものに…
詳細はトヨタのサイトで。
本件AA種類株を発行した当時、トヨタはAA種類株保有者を「中長期的な企業価値向上を目指し、その成長に共鳴する中長期保有を前提とする重要なパートナー」と位置づけました。
しかし僅か5年半で買い入れ消却…
トヨタの言う中長期とは僅か5年半なのか…
買い入れ消却発表文の内容もよくわからず…
結局AA種類株とは何の意味があったのか…
資金負担が重いのはむしろ普通株なのに…
ブレブレの資本政策をとる以上、今後普通株に関してもトヨタ株を保有することはないでしょう…
保有者には既にトヨタから封書で連絡が来ていることでしょう。
なお野村証券に譲渡せずトヨタに取得請求したり何もアクションを取らずトヨタに買い取られると、みなし配当課税になり個人は不利な場合が多くなります。
野村証券に譲渡するのがおススメ。
野村証券からも手続き方法の案内を郵送すると連絡が来ました。
私はどうせなら4/2の譲渡日にして株主権利を取得し議決権を得ようと思います。
そして本件買い入れ消却に賛成したであろう現取締役の再選に反対しようかな?

トヨタAA型種類株とは?
トヨタ自動車は2015年7月にAA型種類株という非上場株式を発行しました。
私も100株だけですが保有しています。

この金融商品の主な特徴は、
①条件決定時のトヨタの株価に約30%のプレミアムを上乗せした価格で発行され、5年間は年平均1.5%の配当を貰える疑似債券、且つ議決権がある
②5年経過以降にトヨタの株価が発行価格を超えたら値上がり益を享受
③5年経過以降にトヨタの株価が発行価格を超えていなくても、払い込んだ金額で買い取ってもらえる(トヨタによる事実上の元本保証)
⇒野村證券に対する譲渡と三菱UFJ信託を経由する買い取り請求では税制が変わります
詳細は下記で
④5年経過以降も年率2.5%の配当を貰いながら、トヨタの株価が発行価格を超えるのを待つことができる
⑤相続を除き当初5年間は原則換金不可
という商品。

今の低金利の環境下ではすごい魅力的!
なおこのAA型種類株は非上場株式のため、受取配当金は所得税のみが源泉徴収。
住民税は源泉徴収されていないので要注意。
トヨタに発行価格で買い戻される可能性
目先は発行価格までの株価上昇を見込みにくい
このAA型種類株の発行条件が決まった2015年7月2日のトヨタ株の終値は8,153円。
30%のプレミアムを上乗せした発行価格は10,598円。
2020年7月以降にトヨタの株価が10,598円を超えてくれば、普通株に転換のうえ市場で売却することで値上がり益を享受可能。
一方で3/29現在のトヨタの株価は6,487円。
発行価格には遠く及びません…
というか、条件決定日の株価(8,153円)にさえ遠く及びません…

ちなみに2015年7月2日の日経平均株価は20,523円。
今よりもほんの少しだけ安い水準なのに、トヨタ株はその時よりも随分と売られているんだね…
ということで目先の選択肢は、
①初回買取請求可能日になったら発行価格でトヨタに買い取ってもらう
⇒三菱UFJ信託を通じてトヨタに買い取ってもらうと、個人はみなし配当課税が適用され税制上不利に!
野村證券に譲渡しましょう!
なお譲渡・買取請求受付開始以降は三菱UFJ信託ではいつでも買取請求を受け付ける一方、野村證券では譲渡を受け付けない期間があります(年に4回の支払日はどちらでも同じ)
②AA型種類株のまま持ち続けて年率2.5%の配当を貰う、且つトヨタの株価が10,598円を超えてくるようなら普通株に転換し値上がり益を享受
になります。
私はおそらく②の通り種類株のまま持ち続けます。
日銀によるマイナス金利政策の下、これほど高利回りで且つ魅力的な商品はありませんから。
実はトヨタが買い戻す選択肢もある
しかしコトはそう簡単に行かない可能性があります。
というのも「トヨタが2021年4月以降1年毎に発行価格で買い戻す権利を保有」しているから。
マイナス金利の環境下、例えばトヨタなら残存5年の社債を0.1%ほどの利回りでも発行できるはず。
一方でAA型種類株の配当は2.5%。
トヨタの財務体質は盤石であり、必ずしも必要でないお金に対してこんなに高いコストを負担し続けるかは不明…
拠り所はAA型種類株発行時の理念
トヨタは目先のお金に困っているわけではないので、経済的な損得だけで見ればトヨタはさっさと買い戻した方がいい。
一方でそもそもこのAA型種類株を発行した際にトヨタは、
・中長期保有を志向する新たな株主層を開拓する
・中長期での成長を目指すトヨタの経営の意思を株式市場へ発信
・中長期で株式を保有する株主を「会社にとって重要なパートナーとなり得る存在」とするコーポレートガバナンス・コード原案に沿った取り組み
を掲げました。
あえて中長期保有を志向する株主層・パートナーと明記しているので、損得だけで早期の買い戻しはしないといいのですけど…

当初理念を大切にしてください!
但しこれが資本コストの考えに則ると、実は普通株の配当負担が更に重いので興味深いんです。
トヨタが負う負担の大きさから言えば、大きい方から普通株>AA型種類株>借入・社債の順になります。
AA型種類株は借入などと比較すれば高負担の一方で普通株よりは低負担…
興味のある方は資本コスト・WACCなどで調べてみてください。