日産のゴーン取締役元会長逮捕
今週、突如降って湧いたようなニュースとして世界中を駆け巡ったのが日産のゴーンさん逮捕劇。
有価証券報告書(有報)虚偽記載容疑での東京地検特捜部による逮捕です。
実は最初この報道を聞いた時に私は、
「単に有報の虚偽記載程度なら地検特捜部が出てくるほどの事案?」
と思いました。
尤もその後に次々と報道された
①個人支出を会社にツケ回し
②度を超えた不動産利用
③姉と実態を伴わない契約を交わし会社にフィーを支払わせた
等々。
流石に社会的地位が高く国際問題に成り兼ねない人物を逮捕するには特捜部案件だなと思いました…
取締役を解任するには株主総会決議が必要
取締役会で可能なコト
数か月にわたる社内・特捜部による内偵もあり、逮捕後にそう時間をおかずゴーンさんは日産の会長を解任され代表権をはく奪されました。
会長とは単に対外呼称のひとつなので簡単。
代表権とは株主総会と取締役会の決議に基づき単独で契約を出来る権利。
例えば他社との契約や銀行との融資取引など。
代表権の無い取締役は取締役会で決議に参加できますが、単独で対外契約はできません。
そのため代表取締役は平の取締役よりも権限が大きくなります。
一般社員が他社と取引しているのは、代表者の権利を代理して執行しているに過ぎません。
通常誰に代表権を与えるかは取締役会に一任されます。
代表権を与えることが出来るならばはく奪も取締役会で可能。
以上、日産は臨時取締役会でゴーンさんを会長職から解任し代表権もはく奪しました。
ゴーンさんは現在、単独で他社との契約や銀行などとの金融取引はできない状態にあります。
株主総会決議が必要なコト
しかしゴーンさんは代表取締役ではありませんが(平)取締役のまま。
なぜなら取締役の選任は会社法第339条で定められた株主総会の専任事項だから。
上場企業の株主の方は毎年株主総会の招集通知を受け取るでしょう。
その中には株主総会で諮られる決議事項が記載されているはず。
恐らく取締役の選任に関する項目もあるでしょう。
取締役を選任できるのは株主総会のみであり、逆に言えば解任できるのも株主総会のみ。
取締役とは株主の代表者だから。
取締役は株主の代表者として取締役会に参加し必要な決議に投票。
同時に他の取締役の行為・執行を監視するのが仕事。
会社側の報告資料を鵜呑みにし、これまでの不正を見逃して(見て見ぬふりをして)きた歴代取締役の責任は重大です。
株主への裏切り行為であり、重責を全うしなかったからです。
社外取締役の責任も重大
社外取締役も同様。
日産でいえば経産省の元官僚と元レースクイーンのレーサー。
監視役が何も仕事をせず、株主のカネから報酬だけ受け取っていたわけです。
今年初めに明らかとなった積水ハウスの事案。
地面紙に引っ掛かり多額のカネをだまし取られた挙句、元社長によるクーデターを通常の役員交代と公表した事案に何も異を唱えませんでした。
社長・会長人事という企業にとって最大級に大切な事案なのに。
ちなみに積水ハウスの社外取締役は阪神百貨店の元経営者と積水ハウスの取引先造園業の創業者。

社外取締役の成り手が少ないので、弁護士や会計士・大学教授に取引先幹部・取引銀行幹部・元役人などが多くの企業の社外取締役を兼任する例が多くなっています。
しかし元役人を社外取締役にするなどダメでしょ。
あのトヨタでさえ元役人を社外取締役にしており落胆させられます…
漫画「島耕作」にも取締役解任事案が
取締役の解任に株主総会決議が必要と私が知ったのは、漫画の部長島耕作を読んだとき。
当時は福田常務取締役⇒中沢取締役⇒島耕作部長⇒部下の課長
といった序列。
中沢取締役が部下の課長を飛ばそうとした際に福田常務が、
「部下の課長を飛ばすなら、自分は中沢取締役の上司なのだから中沢取締役をクビにする」
旨の発言しました。
しかし中沢取締役は商法の規定をタテに反論。
役職をクビにすることは可能でも、取締役を解任することはできないと。
当時は会社法ではなく商法の規定で取締役の解任を規定していました。
なお取締役の解任は議決権の半数以上を有する株主の出席、出席株主の過半数の賛成が必要な普通決議事項。
20年以上前の出来事を思い出しました…