米フィデリティがゼロコスト投信を発売
ここ数年インデックスファンドの信託報酬水準の低下が目立っています。
米フィデリティのゼロコスト投信
米フィデリティが究極の低コスト投信を発売しました。
信託報酬が0%のゼロコスト投信です。
8/17付日経新聞朝刊金融経済面に、
投信の手数料競争 過熱
米フィデリティ「ゼロ」型発表
と題し、ゼロコスト投信の誕生を紹介しています。
銘柄は、
フィデリティ ZERO トータルマーケット・インデックスファンド(FZROX)
フィデリティ ZERO インターナショナル・インデックスファンド(FZILX)
前者は米国株式全体、後者が米国以外の株式全体をカバー。
ティッカーで検索すれば基準価格を確認できます。
ゼロコストの中身
投信を購入・保有・売却する際に必要なコストはそれぞれ、
①購入(販売)手数料
②信託報酬・その他手数料
③信託財産留保額
です(市場で売買するETFは除く)。
①は対面式で説明を受け購入する時に必要なことが多い一方、ネット証券ではほぼ不要。
③は新興国の資産を対象にした投信に多く課され、売却額の0.1~0.5%程度が多いようです。
そして②です。
信託報酬は目論見書にも記載されています。
通常、投信の保有コストというとこの信託報酬を指します。
今回のフィデリティのゼロコスト投信はこの信託報酬がゼロになります。
なお信託報酬はフィデリティなどの運用会社(委託会社)取り分、証券・銀行などの販売会社取り分、信託銀行などの受託会社取り分に分かれます。
しかし②にはその他の手数料もあり目論見書には記載されず「隠れコスト」と呼ばれます。
確認するためには運用報告書を見るしかありません。
この中にはリバランスなどに伴う売買手数料や監査費用、税金などが含まれます。
なお、今回のフィデリティのファンドはその他費用も無料の様です。
ちなみに低コスト投信のeMAXIS Slim先進国株式インデックスの直近その他費用は0.092%でした。

ゼロコスト投信を生み出す仕組み
フィデリティが信託報酬ゼロを生み出す仕組みは大きく分けて二つ
ベンチマーク利用料を削減
インデックスファンドを運用する際は、MSCIやFTSEなど指数を開発・管理する企業に対して残高の一定割合をライセンス料として支払う必要があります。
そのコストは年率0.03~0.10%程度と言われており、0.01%レベルのコスト削減を競うインデックスファンドにとっては大きな負担。
逆に言うと、日経新聞社は日経225型ファンドから多額のライセンス料を得ています。
そこでフィデリティはベンチマークを自社開発してしまいました。
結果、ベンチマーク利用料はゼロとなり大きなコストカットが可能に。
売買手数料などで稼ぎグループとして収益化
確かに信託報酬はゼロですが、前記の通り売買手数料や監査費用などその他手数料は別途必要です。
どうも、このその他費用も無料の様です。
マジか…
恐らくゼロコスト投信の売買執行をフィデリティグループ内の証券会社で受託するのではないでしょうか?
またこの商品を客寄せにしてもっと収益性の高い商品への誘導も可能。
更には貸株も活用しFeeを稼ぐとか。
ゼロコスト投信は受け入れられるか
このゼロコスト投信が投資家に受け入れられるかはベンチマークの信頼性ですね。
ベンチマークの信頼性
MSCIやFTSEが開発したベンチマークは既に多くの投信で採用済。
そのためベンチマークへの信頼性があると同時に、トラッキングエラーの検証などファンドの運営能力把握も容易。
一方でゼロコスト投信のベンチマークはあくまでフィデリティ独自であり、信頼性はまだありません。
トラッキングエラーの測定なども手間でしょう。
現状は追随の動きなし
現状米国の大手運用会社でゼロコスト投信に追随する動きは見られません。
他陣営はお手並み拝見中でしょう。
なお、このゼロコスト投信は日本の投資家が購入することはできません。
フィデリティの日本法人であるフィデリティ証券株式会社でも扱っていません。
しかし年率0.10%のコストなら10年でも1.00%。
年率0.20%でも10年で2.00%。
株式相場の日々の値動きが一日で数%程度はある中、既に誤差のような気がしてきました…
引き下げてくれるのに越したことは無いですけど…