みずほが武田薬品への協調融資から漏れた理由を保有株売却にするようではダメかも

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武田薬品がシャイヤー社を買収

武田薬品がM&Aで製薬世界トップ10入り

今月正式に決まり世間を驚かせたM&A案件が、日本の製薬トップの武田薬品工業によるアイルランドの製薬会社シャイヤーの買収です。
5/8に正式に合意が発表され買収総額は何と7兆円弱。
日本企業による海外企業買収案件としては、ソフトバンクによる英アームの3.3兆円、JTによる英ギャラハーの1.7兆円などを軽く超える超大型ディールです。

武田は国内ではトップでも世界を見渡せば10位にも入っておらず、研究開発費が巨額になる中で将来を不安視されていました。
そこで、売上高が似通っていて難病治療薬に強みを持つシャイヤーを買収することで特徴を出し、世界トップ10入りも果たしました。

メインM&Aアドバイザーは外資2社

M&Aを行う際は、M&Aのノウハウに長けた投資銀行が売り手・買い手にそれぞれアドバイザーとして就きます。
アドバイザーは、M&Aに絡む全ての事案でアドバイスします。
最も基本となる価格算定に始まり、買収後の事業戦略・法務リスク・会計税務リスク、買収に伴う金融スキームや資金調達などを多岐に渡りアドバイスすることになります。

そのため、案件が大きくなればなるほど、そして海外企業や規制などが絡むほど、外資系投資銀行がその経験値と業務遂行能力の高さから優位になります。
最近は、そうした経験を積んだ人材を獲得することで野村證券や国内メガバンクも力を入れていますが、巨大案件になるほど歯が立たない状況に変わりはありません。

今回の武田薬品のM&Aに関しても、メインのアドバイザーには武田側にJPモルガンチェース、シャイヤー側にゴールドマンサックスが就きました。
またしても、日本企業は蚊帳の外です。
申し訳なさそうにお手伝い要員にはなりましたが…

そして、その舞台裏に関して5/25日経新聞朝刊総合面に、

メガバンクのため息

として、国内勢の苦悩が掲載されています。

そもそもJPモルガンチェースが武田側のアドバイザーに就いたのは、

今年1月まで過去36回に渡り、世界中の有力製薬会社を集めた国際会議をホストとして開催してきた実績があるから

とのことです。

買収資金調達に伴う融資からみずほが外れた

資金調達でも外資がメイン扱い

今回の買収に伴うスキームは、株式交換と現金支払いを組み合わせて行われます。
即ち、シャイヤー株主はシャイヤー株を武田に渡し、武田株と現金を受け取ることに。
当然ながら、武田はシャイヤー株主に渡す現金を用意する必要があります。
この買収案件が話題になった当初、日本円で調達し英ポンドに交換するならば巨大な円売り圧力になるとの見方もありましたが、実際は米ドルで調達し英ポンドに交換されることになりました。

武田が公表したリリースによれば、調達するのは総額で308.5億米ドル。
1ドル110円換算で約3.4兆円にのぼります。
その内、3兆円程が期間1年で残りは期間90日の融資(ブリッジローン)。
期限の到来に合わせて、社債や借入などで長期化すると考えられます。

しかし、問題なのは資金の出し手です。
半分をメインアドバイザーのJPモルガンチェース、残りを武田のメインバンクである三井住友銀行と準メインバンクである三菱UFJ銀行が供給します。
M&Aのアドバイザー業務だけでなく、外貨とはいえ銀行の本業である融資でもメインの地位に就けなかったのです。
国内銀行の地位の低さを表しています。

銀行団からみずほが外れた

そして、日経の記事では資金の出し手からみずほが漏れたことも話題にしています。
都銀が10行以上もあった時代とは違いメガバンク3行体制になった現在、大企業はメガバンク3行と取引して、メインバンクでなくてもおすそ分け的に取引に参加させることが多くなっています。
四季報にも、武田の取引銀行としてみずほが掲載されています。
しかし、今回はみずほが外されました。

衝撃的なのが記事の中で、

同行幹部は「過去に武田株を売ってから取引関係が切れてしまった」と釈明する。

とあることです。
取引に関わることが出来なかった理由を、政策保有株の売却のせいにしているのです(本音ではないかもしれませんが、口に出すのはいけません)。

銀行と企業のつながりは株式保有から実利に移行

バブル期以降、金融危機下を除いて大企業を中心に資金調達は銀行借入の間接金融から、株式・社債・CP(コマーシャルペーパー)などを発行する直接金融に移行してきました。
そのため、企業と銀行の関係は薄れています。
実利ベースでの関係になっています。

企業と銀行の株式持ち合いも、双方が株式保有リスクの低減・益出し・資本効率の上昇を目的に解消を進めてきました。
そうした中、未だに取引関係の維持と美味しい取引への食い込みの手段として、株式の政策保有に頼るような考えがあるとは驚きです。

美味しい取引は、高度なスキルを以ってアドバイザリー業務などを行った対価でもあるので、本来は優秀な人材を獲得するなど自行の業務遂行能力を高めなくてはなりません。
それを、政策保有株売却のせいにしているようでは、先行きは暗いとしか言えません…

事業会社も邦銀には株式保有を求め、M&Aのアドバイザーには外資を使うという二枚舌をとっていますが…

スキルを向上させ世界の金融界で活躍してほしい

メガバンクは1990年代・2000年代初めの金融危機から立ち直った後、サブプライムショック・リーマンショックではノウハウの欠如が幸いして深手を負いませんでした。
そのため、相対的に欧米の金融機関と比べてプレゼンスが高まりました。
しかし、欧米金融機関が体力を回復させると、途端に利幅が薄い案件の都合のいい資金の出し手としか見られない状況に逆戻り。

M&A実務だけでなく、外貨での有利な調達コストを可能にするスキーム作りなど、やはり国内銀行はまだまだ見劣りしています。
金融は経済の根幹を左右するので、何とかスキルを向上させて巨大M&A案件でもメインアドバイザーの地位に就く姿を見たいものです。

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