アムンディのあんしんスイッチは強制償還条項・トレール付きバランスファンド

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アムンディプロテクトシリーズ

5/8の日経新聞朝刊に、SMBC・アムンディ プロテクト&スイッチファンド(あんしんスイッチ)という投信の一面広告が掲載されました。
3/末で純資産額が2,300億円を超えたとの表記に興味が湧いたので調べてみました。

運用はアムンディ・ジャパン(以下、アムンディ)。
日本での知名度はあまり高くはありませんが、フランス銀大手のクレディ・アグリコル(以下、CA)、ソシエテジェネラルの運用会社で運用残高は欧州トップ、全世界でもトップ10に入るアムンディアセットの100%子会社です。
ちなみに、日本法人が設立されたのは1971年と相応の業歴を誇ります。

そのアムンディが昨年2017年7月に設定したのが前記あんしんスイッチです。
販売は商品名にも冠が付いている三井住友銀行、子会社のSMBC日興証券、そして野村證券。
三井住友銀行のHPを見たところ、2018年4月の月間販売額ランキングで1位。
ダイレクトバンキング販売ランキングでも2位にランクインしています。

実はこの商品、販売手数料が無料であり普通なら窓口要員コストのかかる店頭販売では敬遠されるはずですが、銀行グループの冠を付けている商品だけに力を入れて販売しているのでしょう。

安心スイッチの商品性

投信分類はバランスであり、直近の運用レポートでは内外株式21.5%、内外債券53.9%、短期金融資産24.5%となっています。
また、その多くは自社設定のETFです。
アムンディはマザーファンドからの信託報酬でも儲けていますね。

販売手数料は前記の通り無料。
信託報酬は税込1.2204%、別途保証料が0.22%。
売買や管理などにその他手数料も必要です。

そして、最大の特徴が強制ロスカットによる早期償還条項とトレール機能です。

強制ロスカット

当初この投信を設定した際、基準価格10,000円に対し90%である9,000円をロスカットポイントに設定しており、この水準に達すると強制的に早期償還されます。
なお、アムンディはプロテクトラインと説明しているので、以下では同様にプロテクラインと表記していきます。

また、通常のファンドでは早期償還価格に達してから全資産を換金していくため、流動性が十分でない資産を保有している場合には自分でBIDを叩いて売却価格を不利にする可能性があります。
しかし、このファンドの場合はプロテクトラインに達した時点で、それ以上価値が下がらないようCAが保証します。
その保証料は、前記の通り投信保有者が信託報酬と別に負担します。

要は、9,000円よりも下がることがないのです。
しかし、CAが保証するという商品の性質上、CAが破綻すれば保証されないため、CAの信用リスクは残ります。

トレール機能

トレール機能とは、基準価格が設定した価格まで上昇したらプロテクトラインが都度上昇する機能です。
広くFX会社が提供するサービスです。
例えば、価格が1,000円上昇したらプロテクトラインも1,000円上昇するなど。
そして、一旦上昇したプロテクトラインは下がりません。

この機能があると、相場上昇局面では確定する利益額を伸ばしながら、相場が押した際には早めに売却が実行されます。
上昇局面が終了し、もしくは地合いが変化した場合でも、利益を殆ど吐き出してしまう事態を回避できます。

今回のあんしんスイッチでは、基準価格が10,600円になるとプロテクトラインは10,000円に、基準価格が11,111円になって以降は随時最高値の90%に設定されます。
もちろん、一旦上昇したプロテクトラインは下がることはありません。

あんしんスイッチを検証

商品性と魅力

投資をするうえで避けては通れないことが投資資産の減少です。
通常は相場が下落すれば保有資産も減少します。

日本は別として、これまでグローバルには株式資産を長期で保有することが、資産を最も増加させることにつながりました。
しかし、ブラックマンデーやアジア危機・ロシア危機・ドットコムバブルにリーマンショックなど、過去には株式市場が大きく調整した時期があります。
そのため、ロスカットが必要なこともあるでしょう。
一旦ロスカットして、再度買い直せばいいのです。

一方で、ロスカットすることは負けを認めることになるため、なかなか踏ん切りがつかない人も多いでしょう。
そういった人には強制的なロスカットが実施される商品は魅力的です。
また、トレール機能が付属するのも面白い発想だと感じます。

しかし、保証料を負担してまでもCAにプロテクトラインを保証してもらう必要性には疑問です。
そもそも、BIDを叩いて価値が急減するような流動性が低い投資対象に、公募投信が多額の資金を突っ込んでいいのかと思いますし。

自分でロスカットする人には不要な商品

自分でロスカットの踏ん切りがつかず、また相場上昇局面で相場の転換点を判断できないという人にとっては利点がある一方、自分でロスカットや利食いが出来る人にとっては無用の商品です。
ましてや、プロテクトラインのために保証料を負担することも重荷ですし。
そういった人たちは、通常の株式投信やバランス投信を購入すればいいでしょう。

また、強制償還になると運用者のアムンディ、販社の銀行・証券、受託者の信託銀行には信託報酬が入ってこなくなるため基本的に運用は保守的、且つプロテクトラインが近づくと資産の換金を更に進め、一層保守的な資産構成になることが想定されます。
直近でも、短期金融資産が24%、債券も50%超えです。
一方で、保証料が0.22%・信託報酬が1.2204%であり、そもそもバランスファンドとしてコストが高過ぎるような…

世界株式に分散投資するファンドが王道

新興国を対象とした投信やテーマ型投信、個別株などは価格変動率が大きくなるため、早めのロスカットが有効なことが多いでしょう。
しかし、世界中の株式や先進国株式などに十分に分散された投信ならば、長期間保有することでリスクを軽減することが可能になります。
そういった意味では、ロスカットポイントが設定されていなくても、低コストのインデックス投信を購入すればいいということになります。

一方で、販売する金融機関からしたらそれでは全く儲かりません。
儲けの厚い毎月分配型投信を売りにくくなった今、稼げる新たな投信が必要です。
そういえば、金融庁が毎月分配型投信をやり玉に挙げたのは一昨年から昨年の春にかけてでした。
そして、本件あんしんスイッチが設定されたのは昨年7月なので、新たな収益源として登場したと考えることができます。

ちなみに、三井住友銀行が販売する毎月分配型投信の内、年間分配額が一番多いのはインベスコの商品で販売者信託報酬は年率0.80%以上。
一方、本件あんしんスイッチはやや及びませんがそれでも0.65%です。
随分と高い収益性ですね。
直近でも短期金融資産・債券比率が78%を超えており、店頭でリスク説明をする際は単純な株式投信よりも低リスクと説明しやすいのでしょう。
購入者からすればコストは高いですけど…

投資家とすれば、リスクを抑えたければ金額を抑え気味にしてMSCIコクサイに連動する株式インデックス投信を買う、もしくは既存の低コストバランス投信を買う、で対応できます。
あえて、本件のような販売金融機関ありきの投信を購入する必要性は低いと考えます。
言いたい放題で関係者の方々、申し訳ありません。

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