有吉ゼミ家を買うで登場した物件一覧はこちら

アムンディのあんしんスイッチは強制償還条項・トレール付きバランスファンド

protect

2021/8/4付で基準価格が9,000円まで下落し強制償還が決定。
詳細はアムンディのサイトをご参照。

コロナ暴落を経て当ファンドは悲しい結末を迎えそうです…

損失限定型投信アムンディあんしんスイッチはもはや強制償還を待つだけ
2021/8/4付で強制償還が決定しました。アムンディのトレール付きバランスファンドのあんしんスイッチがアップアップ状態。コロナ暴落の下げに合わせて株式を売り切ってその後の戻りは全く享受できず。残ったのは殆どが円建短期金融資産。

何と株式ショートポジションも作成していました…
強制償還基準価格まであと少し…

株式ショートポジションも作った損失限定型投信アムンディあんしんスイッチ
アムンディ損失限定投信あんしんスイッチの基準価格が早晩強制償還水準まで早晩下落しそう。株式相場のほぼ底で株式比率をゼロにしたため、その後の戻りは全く享受できないうえ信託報酬で目減り。しかも現在株式ポジションはショート。踏んだり蹴ったり。

アムンディのプロテクトシリーズ

5/8の日経新聞朝刊に、SMBC・アムンディ プロテクト&スイッチファンド(あんしんスイッチ)という投信の一面広告が掲載されました。
3/末で純資産額が2,300億円を超えたとの表記に興味が湧いたので調べてみました。

運用はアムンディ・ジャパン(以下、アムンディ)。
日本での知名度はあまり高くはありませんが、フランス銀大手のクレディ・アグリコル(以下、CA)、ソシエテジェネラルの運用会社。
運用残高は欧州トップ、全世界でもトップ10に入るアムンディアセットの100%子会社。
日本法人が設立されたのは1971年と相応の業歴を誇ります。

そのアムンディが昨年2017年7月に設定したのが前記あんしんスイッチ。
販売は商品名にも冠が付いている三井住友銀行、子会社のSMBC日興証券、そして野村證券。
三井住友銀行のHPを見たところ、2018年4月の月間販売額ランキングで1位。
ダイレクトバンキング販売ランキングでも2位にランクインしています。

実はこの商品販売手数料が無料であり普通なら窓口要員コストのかかる店頭販売では敬遠されるはず。
しかし銀行グループの冠を付けている商品だけに力を入れて販売しているのでしょう。

安心スイッチの商品性

投信分類はバランス。
直近の運用レポートでは内外株式21.5%、内外債券53.9%、短期金融資産24.5%となっています。
また購入している多くは自社設定のETF。
アムンディはマザーファンドからの信託報酬でも儲けていますね。

販売手数料は前記の通り無料。
信託報酬は税込1.2204%で別途保証料が0.22%。
売買や管理などにその他手数料も必要。

最大の特徴が強制ロスカットによる早期償還条項とトレール機能。

強制ロスカット

当初この投信を設定した際、基準価格10,000円に対し90%である9,000円をロスカットポイントに設定しており、この水準に達すると強制的に早期償還されます。
なおアムンディはプロテクトラインと説明しているので、以下では同様にプロテクラインと表記していきます。

通常のファンドでは早期償還価格に達してから全資産を換金していくため、流動性が十分でない資産を保有している場合には自分でBIDを叩いて売却価格を不利にする可能性があります。
しかしこのファンドの場合はプロテクトラインに達した時点で、それ以上価値が下がらないようCAが保証します。
その保証料は前記の通り投信保有者が信託報酬と別に負担。

要は9,000円よりも下がることがないのです。
しかしCAが保証するという商品の性質上、CAが破綻すれば保証されないためCAの信用リスクは残ります。

トレール機能

トレール機能とは、基準価格が設定した価格まで上昇したらプロテクトラインが都度上昇する機能。
広くFX会社が提供するサービスです。
例えば価格が1,000円上昇したらプロテクトラインも1,000円上昇するなど。
一旦上昇したプロテクトラインは下がりません。

この機能があると相場上昇局面では確定する利益額を伸ばしながら、相場が押した際には早めに売却が実行されます。
上昇局面が終了しもしくは地合いが変化した場合でも、利益を殆ど吐き出してしまう事態を回避できます。

今回のあんしんスイッチでは基準価格が10,600円になるとプロテクトラインは10,000円に、基準価格が11,111円になって以降は随時最高値の90%に設定されます。
もちろん一旦上昇したプロテクトラインは下がることはありません。

あんしんスイッチを検証

商品性と魅力

投資をするうえで避けては通れないことが損失計上。
通常は相場が下落すれば損失が発生。

日本は別として、これまでグローバルには株式資産を長期で保有することが資産を最も増加させることにつながりました。
しかしブラックマンデーやアジア危機・ロシア危機・ドットコムバブルにリーマンショックなど、過去には株式市場が大きく調整した時期があります。
そのためロスカットが必要なこともあるでしょう。
一旦ロスカットして再度買い直せばいいのです。

一方でロスカットすることは負けを認めることになるため、なかなか踏ん切りがつかない人も多いでしょう。
そういった人には強制的なロスカットが実施される商品は魅力的。
トレール機能が付属するのも面白い発想だと感じます。

しかし保証料を負担してまでもCAにプロテクトラインを保証してもらう必要性には疑問です。
そもそもBIDを叩いて価値が急減するような流動性が低い投資対象に、公募投信が多額の資金を突っ込んでいいのか…

自分でロスカットする人には不要な商品

自分でロスカットの踏ん切りがつかず、また相場上昇局面で相場の転換点を判断できないという人にとっては利点があります。
一方で自分でロスカットや利食いが出来る人にとっては無用の商品。
ましてやプロテクトラインのために保証料を負担することも重荷。
そういった人たちは通常の株式投信やバランス投信を購入すればいいでしょう。

また強制償還になると運用者のアムンディ、販社の銀行・証券、受託者の信託銀行には信託報酬が入ってこなくなります。
そのため基本的に運用は保守的、且つプロテクトラインが近づくと資産の換金を更に進め、一層保守的な資産構成になることが想定されます。
直近でも短期金融資産が24%、債券も50%超えです。
一方で保証料が0.22%・信託報酬が1.2204%であり、そもそもバランスファンドとしてコストが高過ぎるような…

世界株式に分散投資するファンドが王道

新興国を対象とした投信やテーマ型投信、個別株などは価格変動率が大きくなるため、早めのロスカットが有効なことが多いでしょう。
しかし世界中の株式や先進国株式などに十分に分散された投信ならば、長期間保有することでリスクを軽減することが可能になります。
そういった意味ではロスカットポイントが設定されていなくても、低コストのインデックス投信を購入すればいいということになります。

一方で販売する金融機関からしたらそれでは全く儲かりません。
儲けの厚い毎月分配型投信を売りにくくなった今、稼げる新たな投信が必要です。
金融庁が毎月分配型投信をやり玉に挙げたのは一昨年から昨年の春にかけてでした。
本件あんしんスイッチが設定されたのは昨年7月なので、新たな収益源として登場したと考えることができます。

ちなみに三井住友銀行が販売する毎月分配型投信の内、年間分配額が一番多いのはインベスコの商品で販売者信託報酬は年率0.80%以上。
一方で本件あんしんスイッチはやや及びませんがそれでも0.65%。
随分と高い収益性ですね。

直近でも短期金融資産・債券比率が78%を超えており、店頭でリスク説明をする際は単純な株式投信よりも低リスクと説明しやすいのでしょう。
購入者からすればコストは高いですけど…

投資家とすれば、リスクを抑えたければ金額を抑え気味にしてMSCIコクサイに連動する株式インデックス投信を買う、もしくは既存の低コストバランス投信を買う、で対応できます。
あえて本件のような販売金融機関ありきの投信を購入する必要性は低いと考えます。
言いたい放題で関係者の方々、申し訳ありません。