倒産リスク引受ファンドが登場すると、信用リスク縮小は末期段階

risk

債券投資に伴うリスク

債券投資の世界では、投資家が負うリスクは金利リスクと信用リスクに分かれます。

金利リスクは単純に金利が上がる下がるだけでなく、利回り曲線の形状変化も含みます。
例えば長短金利差が縮小(拡大)するや、短長金利差は変わらないものの、真ん中の中期の相対的な居所が変わるなど(その形状からバタフライスプレッドと呼ばれます)。

信用リスクについては想像がつきやすいと思います。
同じ残存期間の債券なら、信用度が高い企業等が発行した債券利回りは信用度が劣る企業等が発行した債券利回りよりも低いからです。

企業間の比較だけでなく、企業と国家でも比較されます。
そのため、社債の利回りは国債+○○%(T+○○%)というように評価されます。
また、金利スワップ水準に対しても比較される場合があり、この場合は金利スワップ+○○%(L+○○%)と評価されます。
金利スワップは最上級の金融機関の信用度を表します。

信用リスクを回避する方法

信用リスクを回避する

前記金利リスクと信用リスクは債券投資の利益の源泉なのですが、運用方針規定などからどうしても信用リスクを取れないケースが発生します。
例えば、格付でAまでは投資できるが、BBBは投資できないなど。

そうした際に活用するのが、信用リスクを保証する仕組みです。
要は、倒産などに伴い債務不履行(デフォルト)が発生した際に他者が元本、または元本と利息を代わりに支払ってくれ制度です。
もちろん善意で支払ってくれるわけもなく、前もって保証料を支払う必要があります。

この保証のシステムとしては、金融商品のCDS(クレジット デフォルト スワップ)や法人などが保証する仕組みがあります。
CDSの場合は代金を支払ってCDSを買えば、デフォルトが発生した際にCDSを売った人が弁済してくれます。
また、保証会社などにL+○○%といった保証料を払えば、保証会社などがデフォルトの際に弁済してくれます。

要は、コストを支払って信用リスクを他者に転嫁していることになります。
CDSの買い手や保証会社などが高い格付けを保有していれば、その高い格付けの債券に投資しているのと同じことになるのです。
その分、原資産よりも得られる利回りは小さくなりますが…

サブプライムショック時の混乱

サブプライムショック時には、このCDSと保証システムが大混乱を引き起こしました。

米保険大手だったAIGは、サブプライムローンを原資産とした証券化商品などを法人として大量に保証したことに加えてCDSも大量に売っていたたため、サブプライムローンがデフォルトした際に、大量の弁済を求められて破綻しました。
また、保証会社のモノライン大手であったアムバックやMBIAも、保証した証券化商品の弁済を大量に求められ破綻しました。

信用リスクを引き受けるファンドが運用開始

伊藤忠商事系の倒産リスク引受ファンド

債券のデフォルトリスクや売掛債権などの信用リスクを保証するのは、保証会社などの企業だけではありません。
保証を目的に設立される投資ファンドも存在します。
予め保証手数料を受け取り、いざデフォルトなどが発生すれば他の出資者と共に弁済することになります。

この仕組みを利用して、伊藤忠商事系の企業がファンドを運用することになりました。
3/30付日経新聞投資情報面に、

倒産リスク投資ファンド
伊藤忠系が運用開始

と題し、伊藤忠商事系の倒産保証サービスを手掛けるイー・ギャランティが、4月から倒産リスクに投資するファンドの運用開始を伝えています。

イー・ギャランティが保証した倒産リスク(売掛債権)を、複数の投資家が出資した投資ファンドが再引受する形式です。
投資家は、当初イー・ギャランティが受け取った保証手数料の一部を受け取り、デフォルトなどが発生すればイー・ギャランティに代わって弁済することになります。
債券の個別銘柄に投資する際は投資家が1銘柄毎に吟味しますが、今回の商品ではイー・ギャランティが投資先リスクを吟味することになります。

倒産リスク引受商品の登場は信用リスク縮小の末期段階

そもそも、こういった商品が登場した背景には、日銀による異次元金融緩和政策・マイナス金利政策にあります。
金利水準が十分に高ければ信用リスクを取らずとも国債を買えばそれでよく、金利水準が物足りなければ徐々に信用度の劣る債券を購入していけばいいからです。
国債⇒政府保証債⇒地方債⇒高格付社債⇒中格付社債⇒低格付社債と、順を追って信用度に基づく上乗せスプレッドが厚くなるからです。

しかし金利水準が更に下がっていくと、それぞれのカテゴリー間の格差が小さくなっていきます。
例えば国債と高格付社債の格差でいうと、国債利回りが1%の時に格差が0.20%あったとして、国債利回りが0.10%になると格差は0.10%に縮まるなど。
これは金利リスクで十分な絶対的収益を得られないので、より信用リスクを取りに行く投資家が増えるため。

こうした動きは世界中で見られます。
FEDは2015年末に金融引き締めに転じましたが、その後も世界的に低金利が進行し投資家が金利リスクを負っても十分に収益を得られないため、新興国債券などに資金が流入しバブル的な動きになりました。
少なく薄い収益機会に投資マネーが一気に集まったのです。
現在新興国通貨が軟調なのは、その巻き戻しの動きが出ているためと言われています。

資金が集まった例としてイラク国債があります。

世界的なカネ余りと債券バブル FEDが金融引き締めに転じ、ECBも早晩引き締めに向かうとみられているものの、依然として世界的に空前のカネ余り状態にあります。 我らが日銀が一番ぶっこんでいますが...

保証が儲かるなら自社で完結すればいい

同じ事は、今回の投資ファンド案件にも当てはまります。
少なく薄い収益の一方で倒産リスクを引き受けるファンド商品まで登場するのは、通常の投資商品ではもはや十分な収益を得られないため、何でもありの状態になってきている証拠です。

そもそもリスク対比で十分な収益を得られているなら、わざわざ投資ファンドを組成せずイー・ギャランティが自社内で完結すればいいのですから。
外販するのは、リスク対比収益が十分でなくファンド運営手数料を得た方が得策と判断したためでしょう。

投資家は絶対的な収益を得るためどうしても無理をするときがあります。
そして、そういった運用環境になるといつの時代もこういった商品が出現します。
サブプライムローンを使った多段階の証券化商品もそうでした。
運用者・投資家は、リターン比で過度なリスクを取り過ぎないよう注意することが必要でしょう。

スポンサーリンク

シェアする