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中国の不動産税導入が不動産バブル崩壊の引き金にならないことを望む

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中国で全人代が開催中

中国では3/5から16日間の予定で全人代(全国人民代表大会)が開催されています。
日本でいう国会に相当。

テレビなどで様子を見たことがある方も多いでしょうが、巨大な講堂のような会場にもの凄い人数の人が集まっている集会です。
周辺は警備なども強化され物々しい雰囲気になるようです。
但し印象としては議論を重ねる国会と言うよりも、幹部が壇上にいて今後の施策を説明する株主総会のようなものでしょうか。

中国で不動産税が注目される

全人代で不動産税創設に言及

その全人代の中、中国共産党でNo.2の首相が不動産税の立法化に言及しました。

ちなみに中国では個人・企業が土地を所有することはできません。
唯一の所有者は国家であり、個人・企業などはあくまで利用する権利を保有しているに過ぎません。
そのため日本でいう固定資産税や都市計画税にあたる不動産税は存在しません。
今回の不動産税に関しては、土地所有者は国家のまま土地利用権に課税する方式を想定しているようです。

3/8付日経新聞朝刊によると、

不動産税、具体策示さず
中国財政次官「起草急ぐ」

と題し、首相が言及した不動産税に関して税制法案の起草作業を急いでおり、制度の設計・改善・検証・意見聴取をすすめていることを明らかにしました。

不動産税導入の狙いと抵抗勢力

不動産税導入は不動産価格高騰の抑制、貧富の格差縮小、地方財政の安定(税収は地方政府に入るため)に寄与します。
しかし当然ながら既に不動産を所有している既得権益者にはマイナスとなる政策。
そのため共産党幹部・富裕層などの反対が根強くこれまでは導入に至っていません。

最大のネックは、不動産税導入が不動産バブル崩壊の引き金を引いてしまう可能性があることではないでしょうか?
ご存知の通り、いつかは弾けると言われ続けながらも膨らみ続けるのが中国の不動産バブルです。
既に通常の労働者が北京や上海などの都市部で自己の収入のみで不動産を取得することはほぼ不可能。

不動産価格が下落すればそういった労働者には朗報ですが、借金を重ねて既に購入している個人などは暴動などの混乱を引き起こす可能性があります。
中国共産党幹部が何より恐れる事態です。
これまではデモや暴動と言っても公安などにより統制されていました(暴動が統制されるというのも変ですが)。
しかし統制が不可能なほどの規模まで暴動が膨れ上がったら、中国共産党が支配するという体制が崩壊しかねませんから。

中国の行く末は中国自身の問題ですが、中国の不動産バブルが弾ければ日本をはじめ世界中に混乱と悪影響を与える可能性が高いので、相当に慎重に進めて欲しいものです。

日本では課税停止中も地価税が存続中

地価税とは

ご紹介した通り日本では不動産の所有者に固定資産税・都市計画税が課されています。
しかし忘れかけているものの実はもう一つあります。
地価税です。

地価税は1980年代半ば以降に発生したバブル潰しのために創設され、1991年に施行・1992年から課税開始となりました。
といっても、国内株価が1989年末をピークに急落したのとほぼ時を同じくして不動産価格もピークを打ち、1990年3月に当時の大蔵省から出された不動産向け融資の総量規制がダメ押しとなり土地価格は下落ピッチを速めました。
土地価格が急落する局面で地価税を創設・施行したあたりダメ政策の極み。

ちなみに地価税は不動産バブル崩壊の影響が顕著となり金融危機も発生していた1998年に課税が停止されています。
しかしあくまで課税の停止であり、税収を生む卵(課税制度)は将来のためにそのまま存続させるという大蔵省・財務省の得意技は健在。
1999年以降は課税が停止されていますが、iDeCoや企業年金をはじめとした年金資産に課税する特別法人税と同じ論理。

不動産向け融資の総量規制の実態

なお不動産向け融資の総量規制は法律ではなく、「不動産向け融資の伸びを融資全体の伸び未満にせよ」という当時の大蔵省銀行局長による「単なる通達」。
単なる通達と言っても、銀行にとって大蔵省銀行局長は神でありエンマ大王であり絶対的な存在ですから法律と同じ。

こんな大事な施策が国会審議を伴う法律でないばかりか、内閣が決定する政令や省庁が定める省令でもなく、一人の役人が出した通達によるものだったのです。
当時の橋本龍太郎大蔵大臣がどこまで関与していたかはわかりませんが…


不動産向け融資の総量規制に関しては、広末涼子さん・阿部寛さん達が出演した映画「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」にもコメディタッチで登場します。
総量規制という結構難しい話題が、コメディ映画の中で大きなカギを握ることになり面白いですよ。