怖い連帯保証人制度
日々の生活に不可欠な連帯保証人制度
日々生活していく中で連帯保証人は広く日本で普及している制度。
金融機関からの借入や賃貸住宅の賃借、はたまた病院への入院の際などに連帯保証人を用意することが必要になります。
私が会社員時代、取引先に融資を行う際は上場企業に準ずる企業以外には必ず連帯保証人を付けてもらいました。
企業ならまず代表者、それから不動産などを担保提供してもらう場合はその所有者、場合によっては代表者の親や後継者となる子供など…
債務不履行となった場合はなるべく多く回収できるように、担保が不足するケースでは第三者も含めて特に連帯保証人を確保したものです。
特に第三者を連帯保証人にする場合は債務者にプレッシャーがかかりますが、債権者の立場からすると「その分頑張って返済しなくては」という縛りが安心感につながります。
しかし会社を退職しいざ自分がお金を借りる立場になると(借りたことはありませんが)非常に不安に感じます。
大丈夫とは思うものの、いざ返せなくなったら迷惑をかけることになりますし、自分としても他人の連帯保証人になりたくないし…
連帯保証人と保証人の違い
ぱっと見で連帯保証人と保証人は似ていますが、実は大きな違いがあります。
いざ債務不履行となった場合、当然ながら債権者は回収に入ります。
その際、単なる保証人の場合は債権者が回収に来たら「まずは債務者から回収してくれ」とか「債務者にはこれだけの資産があると証明するから債務者に請求しなくてはなりませんよ」と言うことが出来ます。
これらを「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」といいます。
しかし連帯保証人の場合は債務者と同列に扱われるので前記二つの抗弁権は使えず。
債務者を差し置いていきなり連帯保証人から回収することが可能。
連帯保証人が複数いたとしても全額を一人の連帯保証人から回収することもできます。
債権者からしたら債権額を限度として取りやすいところからいくらでも取れるので強力。
保証人の立場からしたら、それほど恐ろしいものになります。
連帯保証人が不要になる流れ
消費者保護度合いを強めた民法に改正される
昨年5月に民法改正法案が成立し、2020年4月に施行されることが昨年末の閣議で決定されました。
今回の改正は債権関連が主でほぼ120年振りの大改正。
改正項目が200程と多いので、周知徹底を図るため改正法案成立から施行まで3年近くを費やすことになります。
特徴としては消費者保護が重視。
今回のテーマの連帯保証人制度に加えて身近なところでいうと、賃貸住宅退去時の原状回復義務や敷金の規定が明文化されると共に、ツケなどのバラバラだった金銭の消滅時効簡素化なども盛り込まれました。
連帯保証人制度に関しては、代表者以外の第三者を連帯保証人とする場合は公証人による自発的意思確認が必要となります。
そのため知識不足のまま連帯保証人になってしまうケースを防ぎ、金融機関が第三者を連帯保証人を確保するバーがあがります。
本来自分の身は自分で守るものですが、法律面から消費者(弱者)を保護する度合いを強めた改正になります。
脱連帯保証人の流れをビジネスに結び付ける
世の中が脱連帯保証人制度に流れ始める中、ビジネスに結び付ける動きも出てきています。
2/14付日経新聞朝刊金融経済面に
「連帯保証なし」広がる
と題し、借入に連帯保証をつけないビジネスモデルの展開や入院時の連帯保証を保証会社が行う記事が掲載されました。
脱連帯保証人の流れをきっかけにする動きです。
無保証人で融資
オリックスがAIと会計ソフトを活用し人手を省いて与信判断することで、連帯保証人を付けなくても銀行が採算を取れる仕組みを開発し一部地銀に提供する方針。
個人向けでみずほとソフトバンクが進めるのが、銀行口座の入出金記録を基にAIが与信判断する手法。
精緻な分析が可能になり貸倒率が低下、結果として無担保・無保証人の融資が可能に。
など。
入院時の連帯保証人を不要にする
特に歓迎したいのは、保証会社が保証することで入院時の連帯保証人を不要とする制度。
私は入院をしたことがないものの、家族や親が入院した際には私が連帯保証人になりました。
しかし今後自分が入院する際は連帯保証人になってくれる人がいるかわからず、そうなると入院しての治療ができないかもしれないから。
核家族化や小家族化で連帯保証人を見つけられないひとも今後増加するでしょう。
そのためこうした無担保・無保証人を利用したビジネスモデルが拡充することを期待します。
保証料はどうにかなっても、保証人を用意することはとても難しいことなので。