税制改悪により住民税と所得税で異なる申告制度を利用可能なのは2023年分の所得(2024年2月に行う確定申告)までに…
残念…

税制改正により、確定申告時に住民税を申告不要にすることが可能になりました。
但し従来通り紙ベースで「住民税を申告不要にする申告」が必要なケースもあります。
詳細は下記投稿で。


上場株式の配当・譲渡所得は、所得税と住民税で異なる課税方式を全国で選択可能に
住民税と所得税で異なる課税方式を選択可能に
今回の確定申告の目玉は、株式の配当所得・譲渡所得に関して所得税と住民税で異なる課税方式を選択できることが明確化されたこと。
これまでは明確化されていなかったため、
①こうした方法を選択可能な自治体がある
一方で多くの自治体では
②特定口座で源泉徴収が完了していればそのまま確定申告を行わず(所得税を申告不要)に住民税も申告しない(申告不要)か、確定申告する(申告分離課税や総合課税)ことで住民税も自動的に申告する(同じく申告分離課税や総合課税)
になっていました。
要は自治体により対応が違っていたのです。
それが明確化されたことで今年からは「配当金は総合課税、住民税は申告不要」のように、所得税・住民税で異なる申告方式を選択することが全ての自治体で可能に。
そもそも、なぜ所得税と住民税で異なる申告方法を模索する必要があるかといえば理由は二つ。
配当控除の活用
配当控除の活用例
配当所得に関しては特定口座で源泉徴収ありを選択していれば配当受取時に所得税・復興税で15.315%、住民税で5.0%の併せて20.315%が源泉徴収されます。
これは課税所得が1,000万円でも500万円でも0円でも同じ。
しかし基礎控除や扶養控除・社会保険料控除などの所得控除を差し引いた課税所得が900万円以下の場合、配当控除と住民税の申告不要制度を活用することにより、配当分に関して20.315%の税率を軽減することが可能となります。
例えば配当金に関し「所得税を総合課税・住民税を申告不要」にすると、税率は課税所得が330万円以下なら5.0%(195万円以下は他の所得の税額からも控除)、330万円超695万円以下は15.21%、695万円超900万円以下は18.273%という具合。
⇒住民税を申告不要にしても住民税分の5%は既に源泉徴収されているので、税負担率が5%を切ることはありません。
なお配当金を含めた総合課税の所得が所得控除内に収まるなら、住民税を総合課税にして還付を受けた方がお得です。
国保の場合は国保税が7割減免になる水準に収まるなら住民税も総合課税がお得。
配当控除活用上の注意点
実は今までも配当金を所得税・住民税ともに総合課税にして配当控除を活用する方法は使えました。
しかし課税所得が695万円超になると税率が20.315%を超えてしまいました。
そのためそれ以上の所得者がやると逆に損になっていたのです。
しかし今回からは住民税を申告不要にすることで、この損をする課税所得のバーが695万円から900万円に上昇。
ちなみに住民税を申告不要にする方法を課税所得が900万円を超える「高所得者」が適用すると、課税所得が1,000万円までは30.683%、最高で49.44%まで上がるので要注意!
国民健康保険税負担増の呪縛
国保加入者にはメリットが乏しかった
給与所得者は課税所得が695万円以下なら、以前でも総合課税扱いで確定申告をすることにより配当所得に関する税率を下げるメリットがありました。
しかし専業投資家や配当金生活者・自営業者など国民健康保険加入者にはメリットは乏しいものでした。
なぜなら国保税にかかる所得割が10%を超える水準であることに加え、その根拠となる所得を算出する際の所得控除が基礎控除以外ほとんど認められていないため。
社会保険料控除も認められていません。
但し国保に加入する家族がいる場合は限度額がやや上昇。
そのため配当控除を受けるべく確定申告をしても、収入から住民税基礎控除の33万円を引いて算出する課税所得のほぼほぼ10%以上を所得割でもっていかれました。
結局、わずかな配当控除のために総合課税扱いにすべく確定申告するインセンティブは働きませんでした。
所得が増えるほど、軽減される所得税・住民税負担以上に国保税負担が増加してしまうケースが多かったからです。
今回の明確化で国保加入者に大きなメリット
しかし住民税を申告不要にできるならこの国保税負担が増すという呪縛から解き放たれ、所得税を総合課税扱いにして確定申告することが可能になったのです。


住民税を申告不要にするためには
配当所得を申告しないと明示した住民税申告書
確定申告をしてそのまま何もしなければ、自動的に住民税も所得税と同じ申告方式になります。
税務署から自治体にデータが送信されるため。
そのため今回のように所得税と住民税で異なる申告制度にするためには、自治体に対して「住民税に関する申告書」を提出する必要があります。
フォーマットは自治体により異なり、「配当・譲渡所得を申告不要とする」のチェック欄を設けて申告不要にする場合はチェックする自治体や、備考欄に「申告不要制度を利用する」と手書きで記載する自治体もあるようです。
居住地の区民・市民税課などに問い合わせれば教えてくれるので聞いてみましょう。
聞くならまだそれほど忙しくない1月中がおススメ。
また住民税に関する申告書を提出する時期に関しては、5~6月の住民税決定通知書が送付されるまで大丈夫な自治体がある一方、確定申告と同様に3/15までに行わなくてはならない自治体もあるので要確認。
申告不要制度は一部でも適用可能
確定申告する口座としない口座があってもいい
そもそも、特定口座(源泉徴収あり)の損益は確定申告してもしなくても構いません。
ということは複数の金融機関の特定口座(源泉徴収あり)で取引しているならば、枠内に収まる分だけ確定申告し住民税は申告不要にすればいいのです。
例えば課税所得が900万円に収まる分だけ確定申告して住民税を申告不要にすれば、配当控除を最大限に活用できます。
同時に国保加入者は国保税負担の上昇を抑えることも可能。
確定申告した内、一部のみ住民税を申告不要にする方法もあり
例えば3社分確定申告したからと言って、3社分全てを申告不要にする必要はありません。
事業やトレードなどがうまくいかず収入が少ないならば、確定申告をしたうえで住民税の申告は課税最低所得の33万までに収まる分のみ申告し、残りは申告不要にしてしまうなど。
例として特定口座の取引は5社。
その内で3社分を確定申告し、更に1社分だけ住民税を申告し2社分は申告不要にするなども可能。
そうした際の還付税金・国保税負担減効果は計算してみてください。
居住地の担当部署に確認しましょう
私が居住する自治体の課税課に問い合わせたところ、上記の「確定申告した内の一部のみ住民税申告不要制度を適用する方法」は可能との返答を得ました。
しかし、こういう質問は初めてだったということで折り返しの電話待ちをしました。
自治体では複数の特定口座を確定申告をした場合はその全てで申告不要にするか、もしくは確定申告した口座全てで同じ課税方式を適用するかしか想定しなかったとのこと。
もし私が住民税申告に行くならば、内容を理解し回答してくれた担当者が直接対応してくれるようです。
しかしいきなり行って対応してくれと言っても調べるために待たされたり違う対応を取られる可能性があります。
やはり事前に問い合わせた方がいいでしょう。
何せ明確化していないと自治体により対応が異なるので。
ちなみに「住民税申告書は住所・名前などの属性以外は空欄で持ってきて」と言われました。
簡単でラッキー!
最後に、私は税理士ではありませんので詳細は税務関係者によくご相談することをおススメします。