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日銀がコソコソと実質的な金融引き締めを実施中~ステルステーパリング

BOJ

2016年9月以降、日銀による国債買い入れ額は漸減

元日銀審議委員の木内氏がTV出演

昨日のテレ東モーサテに野村出身で元日銀審議委員の木内氏がゲスト出演していました。
番組では元日銀審議委員らしく、現在の日銀による金融政策や今後取ることが予想される金融政策を解説していました。
ちなみに現在同氏は古巣の野村に戻っています。

任期が終わると出戻りになることが多いよね

日銀の国債買い入れ額推移

知ってはいたものの改めて再認識したのは、昨年9月以降日銀は国債買い入れ額を徐々に減らしていること。
それまでは量的質的金融緩和の実施(第一次バズーカ)、量的質的金融緩和の強化(第二次バズーカ)で買い入れ額を増額。
尤も、2015年末ごろから市中の国債不足で思うように買い入れが出来ず、買い入れ額は横ばい推移。

その後、前述2016年秋以降は減少に転じています。
ピークと比較すると、現在は国債残高増加ペースで4分の3ほどに。

見逃されがちでも実質的には政策変更

イールドカーブコントロール(YCC)政策

その2016年9月に何があったか。
それは「イールドカーブコントロール(YCC)」の導入です。

要は翌日物など極短期の金利はマイナス圏に置き、残存10年の国債の金利を0%程度にキープするという政策。
そしてここが重要なのですが、決定事項として「買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどにしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。」とあります。

ちょっとわかりにくいかもしれませんが、これまで行ってきた量的質的金融緩和は資産を買い入れることでマネー(量)を増やし、同時に買い入れる資産の質についても従来の金利系資産よりも範囲を拡大するというものでした。
あくまでも量をコントロールしデフレを脱しようとしていました。

それが重視するものを量から金利に変更しているのです。

債券など金利の世界の住人達には常識のことですが、為替や株式の世界の住人を始め、一般にはあまり浸透していません。
量を第一にしていないのですから、金利さえ目標値(残存10年国債で0%近辺)に近ければ、買い入れ量を減らしても文句は言われません。
あくまでも目途だからです。

金融政策の実行部隊

日々の金融調節で国債購入額をいくらにするか、どの年限の国債を購入するか、購入頻度はどうするか、などは日銀金融市場局に委ねられています。
日銀の現場です。

彼らは内外金融機関のディーラー・ファンドマネージャーらとの情報交換を通じて、市場の動きや懸念、要望などを吸い上げて分析。
日銀内で最もマーケットに近い人種であり、日銀執行部の意図・金融政策決定会合決定事項を金融調節を通じ、出来るだけストレスや過大なインパクトを生じさせないよう執行しています。

そして日銀が保有する国債残高の増加ペースが緩やかになっているのは、現場の日銀マンたちの意図でもあります。
現状の枠組み(金融政策決定会合の決定事項)内で、将来の金融政策変更・金融調節変更を行いやすくするための。

今後の日銀による金融政策

金利操作目標対象を変更

番組内で木内氏も言及していましたが、取り得る政策は金利の操作目標を残存10年国債で0%⇒残存5年国債で0%など、操作目標対象年限の短期化でしょう。
現在の政策下では金融機関の収益性悪化の影響があまりにも大きく、超低金利の下で金融仲介機能の低下や金融システム不安につながりかねません。
更に操作目標を短期化して長期・超長期ゾーン金利が多少上昇しても、物価や景気への影響はそれほど大きくないと考えられるから(現在の金利水準がそれほどまで異常に低いということ)。

そしてここが重要なのですが、建前上は「市中流通国債の減少で買い入れ継続が困難になっているため技術上の措置」とすれば、デフレ脱却を果たせておらず明確な金融引き締めに転じることはない、とする従来からのコミットメントを遵守することも可能。
一時的に円高に振れるでしょうから、その際は総裁を筆頭に日銀執行部と大臣を含めた財務省幹部が火消しをする必要がありますが…

要するに日銀はやり過ぎてしまったのでしょう。
副作用が大きい割に効果が限定的で長続きしない政策の採用まで追い込まれて。
今後数年はそのやり過ぎた分の政策を、建前論を駆使しながら引き戻す作業になると考えます。

株式ETF購入枠はどうなる?

但し一個人投資家としては株式ETFの購入枠がどうなるかにとても大きな関心を持っています。
現在の日銀の政策は、株を買うことがいつの間にか手段から目的になってしまっているから。
2013年の第一次黒田バズーカではETFの買い入れ枠は年間1兆円。
それが現在は6兆円に膨張しています…

日銀は株買いをやめない(やめられない)?~マグマは溜まる
日銀が株を買い始めて早いものでもう7年。当初は低下の限界が見えた短期金利に代わりに臨時で株を買うことで、金融緩和とリスクプレミアムへの働きかけを目指したが、今では株を買うこと自体が目的となっている。今後も止められないのではないか?

株価に直接影響するだけに、金利や国債購入量以上に政治家サイドからの横槍も多そう。
株式ETF購入枠の減額・廃止はハードルがかなり高そうな気がします。

尤も、償還が無く残高が積み上がる一方の株式ETFを毎年6兆円も買い続ける弊害は甚大。
その弊害が顕在化する頃に日銀・政府などの現実権者たちが最前線にいるかわかりませんが…

堅い内容の長文となってしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。