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三越伊勢丹の早期退職申込者数が想定下回る~冷静に考えれば当然かな?

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三越伊勢丹の早期退職制度

百貨店という業態そのものが時代遅れとなり、越後屋をルーツに持つ三越とアパレルに強い伊勢丹が統合して誕生した三越伊勢丹ホールディングスも業績低迷に苦しんでいます。
事実上のクーデター・社長解任劇が起きるなど混乱が継続。

その三越伊勢丹の大盤振る舞いの早期退職制度が明らかになったのは今年の10月。
全従業員に占める構成比率が高く、且つ給与水準も高いバブル世代をほぼ狙い撃ちにする制度ですがその優遇内容も注目されました。

40代後半の部長級で上乗せ退職金が5,000万円にのぼり、通常の退職金2,000万円と併せて7,000万円。
同年代の課長級でも4,500万円が上乗せされます。
この優遇措置で全従業員の内で2割程度を削減する計画。

12/21に明らかとなったところでは、この早期退職制度への申込者数が想定を下回りました。
3年間で800~1,200人の応募を見込んでいますので、単純に年平均300~400人。
しかし初年度の応募者は173人のみ。

割増退職金を得て辞めるか、残るか

割増退職金を貰ってもその後の収入に不安

割増退職金を得て退職する場合、当然ながら多くの人はその後転職することになります。
40代後半で大企業から転職した場合、殆どのケースで転職後の収入は現在の収入を大きく下回るでしょう。
一部の大企業を除き定年後の再雇用制度なども未整備であり、年金を受給するまでの収入に不安が残ります。

更には受給する年金への影響も大きくなります。
転職後に収入が減少すれば厚生年金の標準月額報酬も下がり、将来受給する厚生年金も減少します。

対象者の多い課長級で4,500万円を得ても、60歳までの収入減だけで食い潰す可能性が高く、その後の不透明な再雇用制度や収入減に伴う厚生年金の受給額減少を考慮すれば、早期退職に応じるインセンティブは低くなります。

割増退職金は多くを税金で持っていかれる

更に忘れてはならないのが税金。
退職所得は優遇税制が適用され、20年超勤務すると退職所得控除は、
800万円+70万円×(勤務年数-20)となります。
例えば25年勤務すると、800万円+70万円×(25-20)=1,150万円
受け取る退職金が、4,500万円(上乗せ分)+1,800万円(通常分)=6,300万円
とすると課税所得は、
(6,300万円-1,150万円)×1/2=25,750,000円

国税庁の早見表を使い所得税は、
(25,750,000円×40%-2,796,000円)×102.1%
=7,661,584円
住民税は同じく、
25,750,000円×10%=2,575,000円

合計すると税金は10,236,584円となり、差引の手取りは5,300万円ほどになります。

因みに60歳まで38年間勤務し受け取る退職金が2,500万円と仮定すると、所得税が125,072円、住民税が220,000円で合わせて345,072円。
受け取る退職金は少なくなりますが、持っていかれる税金はぐんと減ります。
ここまで税金が減る理由は税率に累進課税が適用されることと、勤務年数が20年を超えるとそれ以降の退職所得控除が年間70万円に増額されるためです。

せっかく多くの退職金を受け取っても、税金で多く持っていかれては元もこうもありません。
もちろん早期退職せずそのまま勤務した場合は年収も多いので、その分退職時までに支払う所得税・住民税も多くなりますが…
なお私は税の専門家ではないのでよくご確認ください。

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三越伊勢丹社員の苦悩

今後の人生設計を考えるいいチャンス

対象年齢にある三越伊勢丹の社員さんたちは大いに悩んでいることでしょう。
置かれた状況はそれぞれ違いますし。
まだ子供も小さく成人するまで時間があるなら、早期退職に応じず安定した収入を望むでしょう。
一方で子供が成人していて今後それほどお金が必要でない、もしくはある程度の資産があるなら応じることもあるでしょう。

みなさん自分の置かれた環境と早期退職に応じる場合、応じない場合でソロバンを弾き、今後の人生設計を考え直していることと思います。
私はいろいろと思うところがあり早めに退職してしまいましたが、三越伊勢丹の社員さんでなくても、もし今退職したらどうなるか一度計算して考えてみるといいと思います。
「意外にイケる」とか「このままではヤバイ」などと再認識するかもしれません。

黄昏研究が流行っている

ちなみに大企業を中心に黄昏研修という名の人生見つめ直しセミナーが広く開催されています。
今後それほど給料が増えないとか、ポストがどんどん減るとか、ある意味脅しながら無理をしない人生設計を考えさせるセミナーです。
受講経験がある人も多いかと思います。

高度成長期のように社会全体が豊かになって、全員に明るい未来がやってくる時代ではなくなりました。
いろいろと落としどころを意識せずにはいられません。

やや長くなってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

追記

今回の大盤振る舞い早期退職制度は持ち株会社と中核子会社向けですが、地方店運営の子会社などにも拡大して実施されるようです。

三越伊勢丹が早期退職制度を地方子会社等にも適用~大盤振る舞いかは所属会社次第
昨年秋、三越伊勢丹HDの大盤振る舞い早期退職制度が設定され、世の中をざわつかせた。更に、子会社毎に条件は異なるものの、多く抱える子会社群でも今後早期退職制度が設定される。従業員は税負担や転職後の給与水準などを慎重に検討する必要がある。