貸倒引当率低下は将来への備えを不十分にする~日銀リポートに注目

貸倒引当金

貸倒引当率が低下中

日銀が地銀等の貸倒引当金に関しレポートを公表

4/12日銀は金融システムレポート別冊シリーズとして、「地域金融機関における貸倒引当金算定方法の見直し状況」を公表しました。
日銀HPの調査・研究コーナーに掲載されています。
なお、本ブログでの掲題レポートの紹介については、日銀金融機構局金融第二課より個別に了解を得ています。
また、本レポートを紹介した記事が4/13の日経新聞朝刊にも掲載されています。

日銀が要旨として紹介している内容をかみ砕くと、
貸倒引当金を積む際の引当率算出の基となる算定期間が、マクロ的な景気循環を網羅しきれていないと考える金融機関が多く、期間を長期化するなど会計ルールに準拠しつつも見直す動きが広がりつつある。
自社の貸出ポートフォリオの特性や自社の融資スタンスの変化に応じ、引当方法見直しを実施している金融機関は未だ少数。

といったところでしょうか。

ポジティブ要因

に関してですが、当然ながら融資が焦げ付く割合は景気動向によります。
景気が良ければ焦げ付き率は低下しますし、景気が悪化すれば焦げ付き率は上昇します。
そして、その景気は定期的に循環していきます。

経済学的には、その発生要因と循環期間により短いほうから、
キチン循環(約40か月)、ジュグラー循環(約10年)、クズネッツ循環(約20年)、コンドラチェフ循環(約50年)と定義されています。
短いほうでは主に在庫の増減などを要因に、長いほうでは技術革新などを要因に発生します。

ここで問題となるのは、10年ほどまでの期間でしょう。
引当金をどのくらい積んだらいいのかを決める際は、当然ながら過去どのくらいの焦げ付きが発生したかを調べて基準にするのですが、その測定期間において景気が悪く焦げ付き率が高かった期間が外れつつあるというのです。

この期間を決める際は、会計ルールや税法上計上することが認められるルールを基にするため、金融機関が勝手に決められるものではありません。
この引当率次第で決算内容をいくらでも操作できる恣意性を排除するためです。
ヒストリカルボラティリティーの計測期間をどう設定するかと同様です。

2008年に発生したリーマンショックで焦げ付き率が急上昇した後の景気回復や、中小企業を中心に融資の繰り延べなどを認めさせる延命法案の影響(もちろん、アベノミクスや日銀による異次元金融緩和もあって)で、近年の焦げ付き率が劇的に低下しているのです。
このため、地銀の引当率は0.7%と過去10年の平均貸倒引当金率である1.2%から急速に低下しています(増益要因)。

以上から、行き過ぎた引当率低下に危機感を抱き、金融機関自らが保守的に算出(計測)期間の長期化を検討する動きが出てきています。
いいことですね。

ネガティブ要員

に関してですが、こちらは深刻です。
現在は改正貸金業法の影響もあり、地銀でも個人向けカードローン残高が急増する金融機関が出てきたり、相続税の課税強化を避けるためのアパート建設用ローン、マンションを購入するためのローンも急増するなど、地域金融機関の貸出ポートフォリオの内容が急速に変化しています。

更には、運用難や地域貢献・新業態向け貸出への挑戦などから、低格付け先への融資を積極化させる金融機関もあります。
にも拘わらず、引当率を融資ポートフォリオの特性・融資姿勢の積極化といった変化に追随させるような経営をしている金融機関は少数だというのです。
これは、①と違い大問題であり、日銀も警戒感を強めているようです。

金融仲介機能の低下は国内経済を疲弊させる

以前もいろいろな投稿に書いてきましたが、銀行の重要な役割は金融仲介機能です。
そして、その金融仲介機能は金融機関の体力に大きく左右されます。
焦げ付きが急増し融資姿勢を厳しくすれば、お金の回り方が鈍くなり景気も更に悪化していきます(信用創造機能が低下)。
金融危機が実体経済を一気に悪化させる可能性があるのです。

金融危機が叫ばれ1997年ころから発生した強烈な貸し渋りというか、貸し剥がしがいい例です。
当時は大手都市銀行でも発生して大問題となりました。
しかし、景気悪化に備えて適正に引当金を積んでいれば、融資姿勢を厳しくする度合いも相対的に小さくできるのです。

景気がいいときこそ、悪化した時のために保守的な経営をしてもらいたいものです。

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